ヒルトン東京に湾曲型LEDスクリーンを設置
ベガプロジェクトが、プリ・プロダクション対応可能なプレミアムオーディオとビデオ機器を取り入れた、世界に一つだけの湾曲LEDウォールと完全なバーチャルスタジオを実現。
イントロダクション
ヒルトン東京は、18の世界的ブランドと7,000の施設を有する世界有数のホスピタリティ企業のひとつです。同ホテルは、日本最大のエンターテインメントとビジネスの街、新宿に830室もの部屋数を有しています。ホテル内のイベント会場は、披露宴会場「菊の間」を含めて968平方メートル、大きなバーカウンターが設置されているロビーラウンジは2,305平方メートルにも及びます。披露宴会場は、天井高6m、最大1,200名様まで収容可能で、大規模なイベントや会議に最適な会場です。
はじまり
新型ウイルスの世界的流行は、イベントの開催、参加のあり方を根本的に変えました。オンライン、さらにはハイブリッド機能の登場によって主催者側はより多くの自由と柔軟性を享受しています。一方で、ワークライフバランスの転換により、イベント業界は競争激化に直面し、参加者側の期待も高まり続けています。ヒルトン東京は、このような新しい環境に対応するため、オンライン、ハイブリッド、そして対面式のイベントを同時にサポートするテクノロジーの導入を考えていました。その目的は、イベント開催能力を高め、市場における圧倒的な優位性を獲得し、イベントのキャパシティと業界における競争力の両方を向上させることにありました。
アイデア
ベガは対面、ハイブリッド、オンライン式すべてに対応したビジネスイベントをサポートするバーチャルプロダクションスタジオに加え、最新鋭のLEDウォールを設置することを提案しました。この2つのテクノロジーを組み合わせることで、コンテンツ制作とエンターテインメント性の飛躍的向上を見据えていました。スタジオは、ライブストリーミング、放送、ビデオ制作が可能で、単独でも、ホテル内の会議室との併用も可能です。この革新的な試みにより、ヒルトン東京は日本を代表するミーティング施設の一つとしての地位を獲得できると確信していました。
ベガは最新の音響映像技術の知識を活かして、イベントコンテンツの作成と配信をサポートする現場チームを設立しました。このチームの存在により、その場でコンテンツのコンセプトやブレーンストーミングを行い、変化するプロジェクトへ柔軟な対応が可能になりました。また、必要に応じた迅速なトラブルシューティングで、スムーズな運営と魅力的なイベントを実現します。
課題 & 解決策
大小さまざまな課題に直面しましたが、ベガはパートナーであるバルコとともに真正面からこのプロジェクトに取り組みました。
電力
最初に直面した課題は、いかにLEDウォールに必要な電力を確保するかということでした。まず、低層階にある変圧器から電力を供給するアイデアは、費用がかさむため実現不可能と判断されました。菊の間が常時イベントで使用されていたため、会場内の電源を利用することもできませんでした。そこで、考案された画期的な方法は、コーヒーメーカーの電源を変圧器で再利用し必要な電力を確保するというものでした。会場の壁の内側にある電源ケーブルの位置を特定するためのX線スキャンが行われ、最終的には、コーヒーメーカーのコンセント跡からLEDの壁まで、2kmのケーブルが追加で敷設されました。
これによって、LEDウォールを設置することでホテルの電気使用量が増加したため、ホテルと街区の電気使用量の制限内に収める必要がありました。こうした許可を得るために、ヒルトン東京のエンジニアリング・チームから書類作成のサポートを得ることでプロジェクトを円滑に進めることができました。
タイムスケール
ヒルトン東京の既存システム(プロジェクター、ロールダウン式スクリーン、ガラスパネル)の撤去から新システムの導入まで、会場の予約の関係上、2週間しか猶予がありませんでした。感染症拡大による供給網の世界的な混乱と、電子機器に使用される希土類金属の入手困難により、機材を期日までに納品する必要があるにもかかわらず納品は難航を極めました。
そこでベガチームは、安全策としてリードタイムをあらかじめ長めに設定し、イベントのスケジュールに合わせて一定期間作業を中断するなど、柔軟に対応することで混乱を回避しました。このようなアプローチにより、LEDウォールは完成翌日にイベントで使用され、成功を収めることができました。
設置
プロジェクト開始当初は、平板のLEDウォールが設置される予定でした。しかし、大きな宴会場には曲面が適しており、より没入感のあるディスプレイを実現できるとビジネスパートナーからあるとき提案を受けました。曲面のLEDウォールであれば、ステージ上に立つ人が左右に表示されるコンテンツを遮ることなく、ステージの中央に立つことができます。
幅15.1m、高さ3.04mを最小限の構造で支える湾曲型LEDウォールを実現するため、エンジニアたちははじめににLEDパネルの並びを直線にで設置する必要がありました。その後、各パネルで5度ずつ調整し、各パネルを完全に一致させることで、曲線を表現するという案を考え出しました。
ベガは、パネルとスピーカーの重さに耐えられると同時に、支柱とケーブルの露出を極力抑えた特注のシステムを設計しました。現場調査や法規制を確認した後、コントロールルームにスピーカーケーブルを通すため、コンクリート壁を貫通させる穴を開ける作業も要しました。
このように緻密な作業は、現場での日本語と英語での詳細なコミュニケーションが重要です。ベガチームはバイリンガルスキルを活かし、プロジェクトを通して関係者間の高度なコミュニケーションを維持しました。こうして完成したオーディオビジュアルシステムは、コンテンツをより魅力的に表現し、会場全体のよりダイナミックな演出を可能にしました。
インテグレーション
LEDウォールとバーチャルプロダクションスタジオをサポートする専任のベガチームに加え、同ホテルのエンジニアリング、技術、運営チームもイベント運営にとって欠かせない存在です。そのため、ベガはヒルトン東京チームを考慮し、プロジェクト成功のために強い協力関係構築を目指しました。
例を挙げると、VGAコネクタからHDMIや光コネクタに移行する際に大幅なアップグレードが必須となり、ホテルチームにとっては何もかも新しいことばかりのため、徐々に機材について理解を深めてもらうよう努めました。ベガチームのインテグレーションは続いており、メンバーは毎週ヒルトン東京のスタッフと会議を行い、今後のイベントや学んだこと、長期的な展望などについて話し合い持続可能な関係を確立しています。
未来を創造
技術の急速な進歩に鑑み、LEDウォールが長期間にわたって最高のパフォーマンスを維持することは最も重要な課題のひとつでした。LEDウォールは時間の経過とともに劣化します。ベガは設置時に積極的に対策を講じ、LEDウォールの輝度をわずか28%に抑えることで、周囲に照明があっても影やにじみのない鮮明な映像を映し出すことで耐久性を向上させました。このアプローチにより、必要に応じて画質を落とすことなく輝度を上げ、ウォール自体の寿命を延ばすことができました。
ベガは、ハードウェアに不具合が生じた場合、すぐに交換できるスペアパーツを現地に大量に備蓄することでウォールの耐久性をさらに高めています。このシステムは、主に高解像度のデジタル技術で駆動し、8本のガラス光ファイバーケーブルでバーチャルプロダクションスタジオに接続されています。この技術により、8K以上の解像度に対応する柔軟性と強力なデータ伝送能力を可能にしています。その結果、将来的に予想される技術の進歩に相当期間対応することができるはずです。
LEDウォールの強度を下げると寿命が延び、LEDダイオードを燃焼から守ることができます。それと同時に、’将来を見据える”ということは、新しい技術が開発されても柔軟に対応できるシステムを有するということです。このLEDウォールは、その適応性の高い設計と最先端機能により、今後何年にもわたって観客に最高の視聴体験を提供する態勢を整えています。
技術
このLEDウォールは252枚のLEDタイル(W28×H9)で構成され、それぞれのピクセル解像度はW6720×H1215となっています。スクリーンには、設定可能なオペレーターコンソールと複数のレイアウトオプションを備えたビデオウォールプロセッサー&スイッチングシステムが搭載されています。
このプロジェクトにおけるLEDビデオウォールと画像処理ソリューションのプロバイダーとして、ネットワークベースのビジュアライゼーションソリューションを創造する世界的なテクノロジーリーダーであるバルコが選出されました。
バルコは、ビデオウォール分野における幅広い知識と長年の技術革新により、没入感のある視聴体験を際立たせる曲面LEDウォール設置に最適なパートナーでした。信頼性が高く、強力な処理を行うInfinipix™イメージプロセッサーは、優れた品質、柔軟性、耐久性を保証し、あらゆる画面構成でワイドスクリーンのブレンドとマッピングを完璧に行うことができます。
80年以上の伝統を持つプレミアムグローバルブランドのバルコは、厳しい国際イベント業界基準に準拠し、比類ないレベルで国内カスタマーサービスを提供しています。最終設定完了の後、ユーザーは設定の必要なくすぐに機器を使用でき、また必要が生じた場合にはメーカーに簡単にアクセスできるようになっています。
音響システムは、受賞歴があり、特許取得されたラウドスピーカープロバイダーであるマーティンオーディオが提供しています。この国際的な業界標準の機器に投資したことで、空間の音質が劇的に一変しました。
また、ホテル内に設置されたバーチャルプロダクションスタジオは、最新ゲームエンジンソフトウェアとシネマグレードのハードウェアを備えています。XRと通常撮影の両方に対応し、マルチサイト連携、グリーンスクリーン機能、Dolby Atmos空間オーディオ録音・ミキシング機能を搭載しています。
このスタジオにより、これまで外部業者から機材を借りなければ実現できなかったフルプロダクションのイベントが実現可能となりました。バーチャル環境、背景、カスタムコンテンツ(ブランドガイドラインに沿ったものなど)、プレゼンテーションの上に追加するビデオレイヤーなどを、必要に応じてベガ専任チームが現場でサポートします。
ベガのプロジェクトリーダーは「特にこのスタジオでは、クリエイティブ・コンテンツ・チームの完全なサポートの中で、クライアントがより魅力的なメディアを開発し、エンドユーザーがより楽しい体験ができる事実が当社の大きな差別化要因のひとつです」と述べています。